これらの作品は自分で撮った風景の写真を手掛かりに制作しています。写真を参照して制作し始めた理由としましては、自分の内側ではなく外側に着眼点を見出すことで、観念的にモノのイメージを描くことを防ぐことができると考えたからです。つまりその現場での光、気温、空間の広さなどの具体的な要素を念頭に置きがら制作することで、色や形を観念的なものにすることを防ぐことができます。自分の頭の中だけで考えたものをアウトプットした作品は、ただの主観的な観念でしかないと考えており、その観念を提示したところで誰とも自分の考えを共有することは出来ないでしょう。
制作の際は写真に写っている要素を取捨選択しながら、現場での体験に基づいて色や描きを決定しますが、それらの色などが画面上で絵画の1つの要素として成り立っているかどうかという、体験と画面上の抽象的な要素とのやり取りをしています。具体的なものを描きつつも画面が抽象的になるのは、私が現場で体験した実感そのものを描き出そうという考えがベースになっているからです。また、作品にそれ以上手を入れる余地がないと判断した段階まで来た時に、作品に手を入れるのを止めます。
画材はマーカーを使用しています。自分のイメージをダイレクトに画面に反映することが自分にとって重要なことであったので、マーカーを使用しました。油絵具だと画面に色を置く前に混色をしたり、絵具を層にしていく作業などのプロセスを念頭において制作をする必要が出てきます。このような作業工程を考えながら制作していくことが自分にとって大変煩わしいことであったので、それを省略できるマーカーを使い始めました。